減圧症の仕組み詳細版-M値とハーフタイム

14377432504_b7104f85de_k

減圧症。

僕らダイバーにとって、最も避けたいリスクのひとつですよね!

一方で、完全に理解している人が最も少ないリスクのひとつでもあります…

そして、その結果として最も”気にされない”リスクのひとつでもあると思います…
※ダイビング中、常に減圧症のことを気にかけている人は少ないのでは、という意味です。

 

減圧症の根本的な仕組みについては、以下の記事でご紹介しました。

減圧症の仕組み

fastassent

簡単に言えば、身体に溶け込んだ窒素が、浮上、に伴って膨張し、溶け込み切れなくなった時に気泡化、減圧症を発症する、という仕組みでしたね!

そして、浮上時には少しずつ窒素が排出されるのですが、急浮上をしてしまうと、窒素の膨張するスピードが、排出されるスピードを上回ってしまうために、減圧症のリスクが非常に高いということでした。

 

さて、では通常の浮上をしていれば、減圧症にかかることは無いのでしょうか?

答えはもちろんNOですが、これを説明するためには、もう少し踏み込んだ説明が必要になります。

 

飽和とは

身体に溶け込む窒素の量、どれぐらいまで溶け込むことができるか、わかりますか??

溶け込む時のことだけを考えると答えは簡単で、溶け込んだ窒素の圧力が周囲圧と同じになるまで、です。
※この含みのある言い方の真相は、のちほど。

周囲圧が分からない人は要復習ですよ!

水深と圧力の関係

 

そして、この状態のことを、飽和状態と言います。

つまり、体内の窒素の圧力が周囲圧よりも低ければ窒素はどんどん溜まって行きます。

 

話を単純化して考えると、逆に、体内の窒素の圧力が周囲圧よりも高くなってしまったとき、窒素は溶け込み切れず、余った窒素が気泡化してしまいます。

 

水底で飽和をしてしまった場合には、もちろん少し浮上しただけでも溶け込み切れなくなってしまうでしょう。

水底で飽和していない場合でも、浮上に伴って窒素が膨張し、ある水深で溶け込み切れなくなってしまうかもしれませんね。

bends1

 

過飽和とは

さて、上記の図の通りだとすると、減圧症にならないためには、浮上して周囲圧が下がっても窒素が溶け出さない範囲でのダイビングを行うことになりますね。

しかし、実際には、普通にダイビングをすれば、この範囲はすぐに逸脱してしまいます。

ではなぜ、それだけで減圧症になることは無いのでしょうか?

 

先ほど、窒素が溶け込むことのできる量として、溶け込む時のことだけを考えると、溶け込んだ窒素の圧力が周囲圧と同じになるまで、と言いました。

この含みのある言い方がカギです。

溶け込む時のことだけ…

つまり、逆に言うと、浮上時には、体内の窒素の圧力が周囲圧以上まで高まっても大丈夫なのです!

 

先ほどの図で、窒素が溶け込んでいる身体を箱で表したので、箱を突き破る様なイメージになってしまいました。

実際のところ、浮上中の身体は風船の様なイメージです。

つまり、飽和量を超えて窒素の圧力が上がっても、ある程度は耐えることが出来るのです。

もちろん、ある一定のレベルを超えると、膨らむ風船同様に破裂(窒素が気泡化)してしまいますが…

bends2

そして、この風船が伸びることの限界、イメージとしては、風船のゴムの固さをM値と言います。

なお、M値は圧力で表されます。

 

例えばM値が2.2気圧だとします。

2.2気圧と言えば、水深12mの圧力と一緒ですね。

ということは、水深12mよりも浅いところで潜っている分には、体内の窒素の圧力が2.2気圧を超えることは無いので、理論上はどれだけ潜っても減圧症になることはあり得ません。

理論上、減圧症にならない水深があるというのは驚きですね!

 

ハーフタイムとは

さて、”飽和とは”のところで、窒素は体内の窒素の圧力が周囲圧と等しくなるまで体内に溶け込んで行くと言いました。

では、そのスピードはどうなっているのでしょう??

血液や骨など、組織によってそのスピードはF1と徒歩ぐらいの差があるのですが、根本的な考え方は一緒です。

 

それは、ハーフタイムという考え方です。

理系の人は、化学の分野で半減期と言えばお分かりになるでしょうか?

 

それぞれの組織にはハーフタイムという時間が定義されています。

これは、その組織に溶け込むことの出来る窒素のうち、半分の量が溜まるまでにかかる時間です。

 

例えば、ハーフタイムが10分だとしましょう。

この組織は、10分で飽和量の半分、50%の量だけ窒素が溶け込みます。

 

では、20分で飽和するかと言うとそうではなく、常に残りの量の半分で考えます。

つまり

10分→50%、20分→50%+(50%×1/2)=75%、30分→87.5%

と続きます。

このままで行くと理論上、完全に飽和することはありませんが、ハーフタイムの6倍の時間で、事実上の飽和ということにされています。(98.44%)

image

尚、説明をわかりやすくするため、スタートを0にしましたが、実は潜る前から我々の体内には窒素が溜まっています。

地上での窒素の圧力は0.78気圧分だけ体内に窒素が溜まっています。

なので、厳密には、グラフは若干変わってきます。(水深により異なります)

 

一旦、ややこしい、地上で飽和している窒素は抜きで考えましょう。

M値のところで例に挙げたM値2.2気圧の組織。

この組織のハーフタイムが30分だとします。

例えばこの時水深34mに潜ったとしましょう。

この水深の圧力は4.4気圧、つまり水深12mの2倍です。

ということは、1回目のハーフタイム、30分後に体内の窒素は2.2気圧となり、M値と等しくなります。

 

逆に言うと、30分を超えた時に、減圧停止が必要(DECO)と言うことですね。

 

いかがでしょう?

ダイコンの中で行われている(であろう)計算が、案外簡単に出来た気がしませんか!?

 

地上で飽和している窒素の影響も考慮に入れたものは以下の通りです。(水深35mの場合)

bends4

実際のダイビング

 

減圧症の仕組み、少し詳しく分かってもらえましたか!?

今回は話を単純化するために、M値をひとつで考えました。

が!

実際には人間の身体は血液や骨など様々な組織で作られており、そのためM値は複数設けて計算します。

なので、ここからがさらに厄介なんですよね…

ということで、またの機会とします!(笑)

 

ひとまず、M値とハーフタイムの意味だけ、今回は押さえてもらえればOKです!

念を押すようですが、今回の話は、詳細版とはいえ、話を単純化しているので、これだけが全てと思わないでくださいね!

 


Bookmark the permalink.